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IちゃんとP(パパ)小野田君の会話が続きます。

イラスト

Iちゃん

パパ、今日は「トラフィックの話」の続きだったわよね。

Pパパ

そうだったね。
その前に前回約束の「加入者習性の話」をしようか。
君たちに参考になると思うよ。

Iちゃん

話して、話して!

Pパパ

加入者習性とはね、電話を使う人の一般的・平均的な習性のことなんだよ。
いくつかあるが、今日は代表的な3つの話をしよう。
(1)電話の平均通話時間は「3分」だということ。
(2)電話をかけて相手が応答しない場合、諦めて「切断」するのは「ベル鳴動7回=21秒後」だということ。
(3)電話がなかなか相手にかからないとき、やたらと電話の発信を繰り返すことだ。

小野田君

面白いですね。

Pパパ

図1 1通話(=1度数)は3分
1度数は3分。公衆電話も課金は「1度数3分」

まず(1)の「電話の平均通話時間が3分」のことだが、今の若者は愛ちゃんのように、ダラダラ電話する人が多くなったが、大昔も市内通話の時間制限は無かったんだが*1、課金制度を始めるときに、統計的にも実用上も「1通話=1度数は3分」が適正と判断されたんだね。
それを基に「加入電話や公衆電話の1通話は3分」になったんだよ。

Iちゃん

1通話3分って、ラーメンのできる時間と同じなんだ。(笑)

Pパパ

(2)の「電話をかけて相手が応答しない場合、諦めて「切断」するのは「ベル鳴動7回=21秒後」だということなんだが、電話のベルは通常「1秒鳴って2秒休む」ことは知っているね。

Iちゃん

図2 発信者の習性
発信者の習性

エー、知っているわ。

Pパパ

図3 ルーズベルト大統領
ルーズベルト大統領

つまり、電話があってベルが7回以上鳴っても応答しないと70%の人は諦めて切ってしまうということだ。

有名な話が2つある。
1つは、アメリカのルーズベルト大統領の話だ。
彼はアメリカ史上唯一、四選した大統領で、アメリカ史上唯一の重度の身体障害を持つ大統領でもあったんだが、その人気と人望はたいしたもので、彼の訃報を聞いた出身地の住民が一斉に「お悔やみの電話」や「弔電」をしたので、電話局の交換機がパンクしてしまったんだそうだ。「無効呼」の大量発生だね。

図4 ユリ・ゲラー
ユリ・ゲラー

もう1つは、日本の話だ。
ユリ・ゲラーと言う超能力者が来日して日本テレビで「スプーン曲げ」を披露したが、そのとき、日本テレビに電話が殺到して所属局の交換機がパンクしたそうだ。これも無効呼の大発生と言うことになる。

図3、図4の出典:ウィキペディア(Wikipedia)

Iちゃん

それって、レガシー交換機だからなの?
IP電話とかNGNでは起きないのかな?

Pパパ

同じことさ。トラフィックの輻輳(ふくそう)という問題はIP電話網でも、ついてくる問題なんだよ。

いやいや「加入者習性」の話が長くなってしまって、本題の「トラフィック理論の話」に入れなくなってしまったね。

Iちゃん

パパ!もう一つ「モリナおじさん」と「アーランおじさん」の話をしてくれる約束だったわよね。

Pパパ

あー、そうだったね。
二人とも有名な「トラフィック学者」なんだよ。
アーランのことは、前回説明したよね。

実はね、この二人が作った「トラフィックテーブル」*2があるんだよ。
このテーブルを使うと、手品のように簡単にPBXの必要外線数が求められるんだ。

小野田君

それはいいですね。どちらを使えばいいんですか?
IP電話でもいいんですか?

Pパパ

IP電話でも同じことだし、どちらを使ってもいいんだ。
私はPBXや企業のネットワーク構築には、モリナおじさんのテーブルを使っているんだよ。

Iちゃん

どうしてなの?

Pパパ

図5 モリナが安全サイド
モリナが安全サイド
補足:モリナの方が、所要回線数が多く
なるので安全サイド

その理由はね、二人の理論の違いでもあるんだが、モリナの方が「所要回線数が多目に出る」からなんだ。
その方が安全サイドだからね。

小野田君

その具体的な使い方を知りたいですね。
教えてくれませんか。

Pパパ

では、分かり易いように、小野田君のとして具体的な事例で説明しよう。

小野田君のお客様が、2つの事業所を統合した新しい事業所を作ることになったとしよう。そのお客様の拠点は

  1. 社員数は約50名
  2. 端末電話機数は、60台(社員1人に多機能電話機を1台、会議室・応接その他共有設備に標準電話機を10台)
  3. 外線には、NGNのフレッツ光ネクストを利用する

という想定にしようか。
携帯電話を内線に使用するFMCにしても良かったが、トラフィック計算の例題なのでシンプルにしたよ。

小野田君

いいですよ。
この事例で「フレッツ光ネクスト」の必要チャネル数を計算する方法を教えて下さい。

Pパパ

PBXがレガシーでもIPでも、「中継方式図」を書く癖を持つといいよ。
このお客様の「中継方式図」を書くと、図6のようになる。
中継方式図を書くと、そのシステムの規模・内容・機能までが表現できるし、見るだけでシステムの概要を理解できるんだ。
SEは得意だが、営業の人も書く癖を持って欲しいね。

小野田君

わかりました。頑張ります。(笑)

図6 中継方式図
中継方式図

この他に、FAXやボイスメール、課金システム等があれば、書き加えるが、今回はトラフィック計算用なので、内線と外線のみ表示した。

Pパパ

四角がPBXだ。
サーバー型IP−PBXでも同じように考えればいい。

まず、外線発信呼量を計算するんだが、前々回勉強したように、一般的な企業なら「1内線当たりの外線発着信呼量は4HCS(発信2HCS,着信2HCS)だったね。

そこで、総外線発着信呼量は「4HCS(発着)×60(回線)」=240HCS」とな
これで、モリナのトラフィックテーブルを使うと、直ぐに所要外線数が出てしまうんだよ。

Iちゃん

えーっ!うそー!
それなら私にもできちゃうわ!(笑)

Pパパ

そうそう、愛ちゃんでもできるよ。
表1がモリナのトラフィックテーブルの一部だ。
縦が中継線数、つまり外線(フレッツ光ネクスト)のチャネル数、横軸が「呼損率」だ。
小野田君、愛ちゃん!呼損率の勉強はした*3から、覚えているだろう。

Iちゃん

覚えているわよ。呼んで損する確率のことでしょ。(笑)

Pパパ

そうだ。
外線発信の呼損率は1/50で計算すればいい。
そうすると、表1から簡単に必要外線チャネル数が求められるんだが、O君、どうだい?

小野田君

はい、13チャネルと直ぐ出ますね。

表1 モリナのトラフィックテーブルとその使い方
モリナのトラフィックテーブルとその使い方

Pパパ

そうだ。
13は半端な数字なので、14チャネルに繰り上げてもいいね。

Iちゃん

簡単ね。
必要なトラフィックを計算すれば、たちどころに必要チャネル数が分かるなんて、モリナおじさんは偉いね。(笑)

小野田君

このモリナのトラフィックテーブルは、ネットで手に入りますか?

Pパパ

私も調べてみたがなかなか出てこなかったので、参考までに持ってきた(表2〜表5)よ。
いつも持っているといいね。

小野田君

分かりました。
手帳に貼り付けておきます。
ところで、関連した質問ですが、フレッツ光ネクストに法人用の大容量タイプのものがサービス開始になったようですね。
このことについて教えてくれますか?

Pパパ

それはいいが、概要くらいは自分で調べなくてはいけないね。
これを宿題にしよう。
O君が概要を調べてくること、それに対するメリットや注意事項などを私が補足しよう。
それで、どうかな?

小野田君

分かりました。
概要を調べて次回報告します。
有難うございました。

*1
1通話3分:長電話防止が叫ばれた時(昭和40年末)もあった。それ以前は市内通話は無制限だったが、それでも市外通話(申し込み制)は3分・1分制で課金されていた。1970年(昭和45年)の1月30日から、公衆電話での長話を防止するための理由で東京都心部を皮切りに公衆電話からの市内通話『3分打ち切り』が順次開始された。(つまり、市内通話料金が3分で10円になった)。
この時間の基準は3分間あれば用件の伝達は可能であろうと判断し、3分間をひとつの区切りとしたとも考えられる。
*2
トラフィックテーブル:所要呼量と呼損率から所要回線数(チャネル数)が、即座に求められる「早見表」のこと。
*3
呼損率の勉強:このコラムの第62回(2010.9)で解説済み。

表2 モリナのトラフィックテーブル(1)
モリナのトラフィックテーブル(1)

表3 モリナのトラフィックテーブル(2)
モリナのトラフィックテーブル(2)

表4 モリナのトラフィックテーブル(3)
モリナのトラフィックテーブル(1)

表5 モリナのトラフィックテーブル(4)
モリナのトラフィックテーブル(2)

表1〜4の出典:電話技術完全ガイド(藤島 信一郎著)(リックテレコム)

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