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第136回 「続IoT」の話

IPよもやま話

I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。

イラスト

Iちゃん

今日は、小野田君が「IoTについて調べた話」をしてくれるんだったわよね。

Pパパ

「その後のIoTの話」といえば、ソフトバンク社の外国企業の大型買収の話があるね。

Iちゃん

えーっ、その話、IoTと関係するの?

Pパパ

そうだよ。
ソフトバンクグループが英ARM Holdings(ARM)社を買収することで、両社間で合意したと先ごろ(2016年7月18日)に発表されたね。買収額は約240億ポンド(約3兆3000億円)で、ARM社はソフトバンクグループの完全子会社となる。両社は、買収を2016年9月30日までに完了すると孫さんは見込んでいるようだ。

Iちゃん

それで?

Pパパ

今回の買収についてソフトバンクグループ代表取締役社長の孫正義氏は「IoTがもたらす重要なチャンスをつかむことにある」とコメントしたんだ。同時に、「英国におけるARMの従業員数を少なくとも倍増させる」とも言っているんだよ。
ARM社は、最終製品を手掛けてはいないので一般的な知名度が高いわけではない。しかし、現在のスマートフォン向けのIC(アプリケーションプロセッサー)や組み込み機器向けのマイクロコントローラー(マイコン)のほとんどはARM社の中核回路(CPUコア)を基にしており、半導体メーカーは多額のライセンス料をARM社に支払っていると言われているんだよ。
孫さんの発言をピックアップすると「ARMは今から20年以内に約1兆個のチップ(IoTの)を地球上にばら撒くことになる」そして、「1兆個のチップから地球上の森羅万象のデータを吸い寄せられれば、そのデータでディープラーニングする超知性は、最も賢くなり、最もすばやく推論できるようになる」とまで言っているんだ。(*1)

Iちゃん

そうなんだ。3兆円以上の投資をするほどIoTって大きなビジネスチャンスなのね。

小野田君

そうです。
勉強会でそのIoTの勉強をしたので興味を持っていましたが、いくつか報告したいことがあるので、整理してきました。報告しますね。
その内容は大きく言って

  1. IoTのしくみ
  2. IoTに副作用あり
  3. 国や日立さんの動き等最近の動向

の3点です。

Pパパ

図1 IoT調査の小野田君
図1 IoT調査の小野田君

ほほう、それはいいことだ。
愛ちゃんも聞いてばかりいないで勉強してほしいものだね。

Iちゃん

このまえ、勉強会で成果報告したでしょ。

Pパパ

あーそうだったね。
これからも勉強して自発的に報告してくれよ。

Iちゃん

わかりました。
小野田君、本題に入って!

小野田君

はい、まず「IoTのしくみ」について勉強しました。
図2にその仕組みが分るように図にして来ました。
IoTは、今までのパソコンやスマホのように「直接ネットに接続できるもの」ではない「洗濯機や冷蔵庫、照明器具や傘などの「直接ネットに接続できないモノ」が繋がるようになるのですが、それには「ゲートウェイ(センサーなど内蔵)」が必要になります。

Iちゃん

それは前回の勉強でも理解したわ。
センサーには、どんなものがあるの?

小野田君

図2 IoTのしくみ
図2 IoTのしくみ

はい。
図2にも書きましたが、「画像センサ」「光センサ」「温度センサ」「湿度センサ」「磁気センサ」「加速度センサ」等々があります。

Iちゃん

「デバイス」って「モノ」のことよね。

小野田君

そうです。
文字通りIoTにとって重要な部分ですね。
デバイスの役目は「センシング」と「フィードバック」の2つです。

Iちゃん

センシングって、自分の状態をシステムサーバーに送ることでしょ。
図のセンサーのことではないの?

小野田君

鋭いですね。
センサーも含めて「デバイス」といいましたので、その通りで「センシング」とは「デバイス自身の状態に加えて周辺環境の状態の情報も収集して通知するしくみ」のことです。
このセンシングを実現するのが、愛ちゃんのいうとおりの電子部品の「センサー」の仕事です。

Iちゃん

しくみの話は私でも理解できました。
2番目の話の「IoTの副作用」って何のこと?

小野田君

お二人は「お薬」を飲んでいますか?

Pパパ

うん、飲んでいるよ。
高血圧や少し糖尿の心配があるので、毎日飲んでいるよ。

小野田君

愛ちゃんは?

Iちゃん

毎日ではないけど、風邪をよく引くので「風邪薬」など飲むわね。
何で、そんなことを聞くの?

小野田君

ご存知と思いますが、薬には薬効がある反面、必ず「副作用」がありますよね。
ものには「メリット」がある反面、必ず「デメリット」があるようなものですよね。
実は、IoTにも「副作用」というか「問題点」があるんです。

Iちゃん

えーっ、それってどんなこと?

小野田君

図3 IoTの副作用
図3 IoTの副作用

NHKのニュースで報じられていたんですが(*2)、「IoT機器がサイバー攻撃の犯人」になった、というんです。

  1. 情報家電のIoTが「サイバー攻撃の温床」になっている。
  2. この4ケ月の間に、IoTから発信された攻撃が、世界中の15万ケ所から合計で90万回観測されている。
  3. その主な原因は、コンピュータウィルスに感染している
    IoT機器の台数が非常に多いことである。
  4. IoT機器がサイバー攻撃の温床になってきた。
  5. つまり、IoT機器として既に「ルーター、テレビ、冷蔵庫、防犯カメラ、体重計など」6億台がインターネットに繋がっている。(日本国内の業務用も含めて)
  6. パソコンやIoT機器が「ゾンビ化」(*3)して企業のパソコンなどを攻撃する。
  7. 世界中のIoT機器がゾンビ化され始めている。しかも自動でゾンビ化の仲間を増やしている。

っていうんです。

Iちゃん

ひゃー、これは大変なことじゃないの?
防ぐ方法は無いんですか?

小野田君

そうですね。
利用者としての対策は「パソコンならウィルス対策」がありますが、IoT機器には今のところありませんよね。
安全なIoT機器作りが必要になってきますね。
デバイスのゲートウェイなどに「ウィルス対策」をするなど、これからのメーカーの機器作りに課題があります。

Pパパ

これは大きな問題だね。

Iちゃん

それじゃ最後の「国や日立さんの動き」のお話をして下さい。

小野田君

はいはい。
では国の動きから話します。
前回の勉強会で「IoTの世界では日本は遅れている」と聞かされましたが、それを挽回するために、国が動いたんです。
これもNHKのテレビニュースで報道されました。(*4)

Iちゃん

あら、具体的には?

小野田君

図4 日本とドイツが提携
図4 日本とドイツが提携

テレビ報道の中身を紹介すると

  1. 日本とドイツは「データをやり取りする共通規格を作ることなど政府間で取り交わす覚書を近く交わすことを明らかにした。
  2. 日本では、IoTの規格作りに向けた動きが企業ごとに異なっているのが現状である
  3. 世界的には技術的に大きく先行しているのは、ドイツとアメリカで、日本は遅れをとっているのが現状。
  4. 先行するドイツと共通規格とすることで国際標準化に向けて主導権を握るのが狙い。
    (IoT分野で携帯電話のようなガラパゴス化を避けたい動き)
  5. 企業や国の枠を超えた共通の土台を作り上げ、国際競争力を高め、国際的な主導権を握るのが狙い。
  6. 覚書には、企業などが持つ開発中の技術を可能な限り共有し、通信技術・ソフトウェアなどの共同開発も盛り込む考え。
  7. 出遅れている日本が、ドイツとの連係を図ることで、巻き返しを図る道を選ぶこととなった。

というものでした。

Iちゃん

そうなんだ。
その中の「4.」項がポイントね。
日本が世界の動きに遅れないように、できるなら世界のリーダーの位置に立ちたいってことね。
分ったわ。
じゃあ次は、日立さんの動きね。

Pパパ

おやおや、今日は張り切って取り仕切るね。

Iちゃん

はい、張り切っています。(笑)

小野田君

前回も日立さんの動きを勉強しましたが、新しい情報(*5)として日立さんが「IoT基盤を整備して鉄道や電力事業に力を入れGEやIBMより優位に立とう」としていることなんです。

Iちゃん

そうなんだ。
力が入っているのね。具体的には?

小野田君

図5 海外に先行
図5 海外に先行

具体的に話しましょう。
日立さんは、今年の4月14日に次のようなことを発表しました。

  1. 社内の各ビジネスユニット(BU)を技術支援するソフト製品群「IoTプラットフォーム」の開発・構築を強化する。
  2. IoTや人工知能(AI)などを活用して、鉄道BUや電力BUなどの事業に生かす。
  3. 2016〜2018年度の3年間で累計1000億円を開発費用として投じる。2016年5月には、IoTプラットフォームの第一弾となるソフト製品を提供開始する計画。

というんです。

Iちゃん

ぜんぜん具体的ではないわね。
もっと中身を教えて下さい!

小野田君

おやおや、厳しいご指摘ですね。では、補足します。
その「IoTプラットフォーム」の中核となるのは、日立さんが2015年5月に買収した米ベンタホ製のデータ分析ソフト「Pentaho」だそうです。
これは、OSS(オープンソーズ・ソフトウェア)ベースのソフトで、IoTのセンサーやSNSなど100種類以上のデータ形式に対応していて、それらを可視化、分析ができるんだそうです。

Iちゃん

それだけで「GEやIBMの先を行く」ってこと理解できないけど?

小野田君

はいはい、すみません。そのことを説明します。

  1. 制御機器などのOT(オペレーショナルテクノロジー)と、日立が強みとするITの技術を融合させ、事業拡大に生かす。
  2. IoT向けのデータ分析基盤では米GE(ゼネラル・エレクトリック)の『Predix』が先行しているが、当社の方がソフト関連事業の規模は大きい。米IBMなどのITベンダーも狙っている市場だが、制御機器などのノウハウでは当社の方が長けている。だから、これらの企業に対して優位に立てる。

と日立さんの幹部(*6)が発言しているんです。

Pパパ

そうか、その辺は大きく期待したいところだね。小野田君、よく勉強したね。
また、アンテナを高くして新しい情報の入手にも努めたね。感心、感心。

小野田君

有難うございます。
誉められたついでに、お願いがあります。
じつは、最近テレビなどでよく報道されている「フィンテック」について、少し教えてほしんです。

Pパパ

そうか。
今度は愛ちゃんにやってもらおうと思ったが、このテーマは少し重たいかもしれないので、私が解説するか。

小野田君

よろしくお願いします。

*1
孫正義氏の発言:孫社長の講演(SoftBank World 2016)で出典はbusinessnetwork.jp(2016.07.21)
*2
NHKニュース:NHKのテレビニュース(平成28年2月25日のニューズシブ5時)
*3
ゾンビ化:コンピューターウイルスに感染することでサイバー犯罪者に乗っ取られ、遠隔操作が可能な状態となっているパソコンのこと。
*4
日本とドイツ提携:NHKのテレビニュース(平成28年4月1日朝5時)
*5
日立の新しい情報:ITPro by日経コンピュータ(平成28年4月14日)
*6
日立の幹部:サービス&プラットフォームBU CEO(最高経営責任者)の小島啓二執行役専務

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