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Hitachi

I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。

イラスト

Iちゃん

今日は「シンクライアント」について教えてくれるんだったわよね。

Pパパ

そうだ。
このテーマを今まで取り上げなかったことが不思議なくらいだね。
小野田君は「シンクライアント」って聞いたことがあるかな?

小野田君

はい。
何か聞いたことがあるような気がするけど説明できません。

Pパパ

そうか。
シン・クライアント(Thin−Client)は、もう大分以前かららセキュリティ対策として注目されているんだが、簡単に分かり易く説明すると、図1のように、シンクライアント用PCを持つと、アプリケーションソフトや重要データを蓄積しないディスクレスのPCになるんだよ。図1をみれば理解できるかな?

図1 シンクライアントとは
図1 シンクライアントとは

Iちゃん

パパ、大体シン(thin)ってどんな意味なの。

Pパパ

はっはっは。
それは、図1でも分かるだろう。
thinとは、日本語に訳すと「内容の無い」「浅薄な」「実のない」といった意味なんだ。
端末(PC)にHDDが無かったり、あってもデータやアプリは搭載できないという意味だね。

Iちゃん

第一、何故個人のPCにメモリを持たさないようにしたり、USBが使えないようにするの?仕事が、やり難いし、自宅に持って帰って仕事する、なんてこともできなくなるじゃないの!

Pパパ

はっはっは。
その通り、自宅に持って帰れないようにするんだよ。

Iちゃん

えーっ、どうゆうこと?
シンクライアントの目的って何なの?

Pパパ

それはね。
何故、シンクライアントが注目を浴びたかについて話せば理解できると思う。
今から10年ほど前から企業における「情報漏えい事件」*1が頻発したんだ。その原因は「業務用パソコン」の紛失や盗難による情報漏えいや、自宅にUSBなどを持ち帰って個人用のPCにデータを移して作業したことで、ウィルスによりファイル共有ソフト経由で機密情報が漏洩するなどといった事件が相次いだんだよ。

Iちゃん

そうなんだ。
そこで、端末側にデータが残らない「シンクライアント」が注目されたのね。
USBも持ち帰ったら具合悪いんだ。

Pパパ

そう。
シンクライアント端末はサーバー上にあるOSやアプリを使用するため、ハードディスクを搭載しないものもあるんだよ。このために端末にはデータが保存されることがなく(キャッシュ*2は残るがね)、紛失や盗難があってもデータが漏えいする危険性がないんだよ。

小野田君

そうなんだ。私の会社も、シンクライアントを採用しているんですね。
USBなどの持ち出しはできないんです。
「シンクライアント」は今、どの程度普及しているんですか?

Pパパ

うん、ある調査データから、私が分かり易いように、グラフと図を作ってみたので、よく見てくれないか。
(図2)この図から、調査した企業の約20%(5社に1社)が「採用または採用を検討中」なんだね。
導入または検討中の目的についてもベスト5を調べておいたよ。
さらに、「必要性を感じているが時期は未定」は結構多くて4割強だ。

小野田君

意外と普及していないし、検討中の企業が多いんですが、その理由は何でしょうか?

図2 最近の普及状況
図2 最近の普及状況
出典・引用:キーマンズネット2010年5月18日〜 5月25日会員企業へのアンケートより作成

Pパパ

「導入にコストがかかること」が一番のようだ。
「導入価格がもう少しやすくなってくれないと全社に適用できない」とか「端末価格が普通のPCとあまり変わらないのが経営トップに説明できない」などと言っているようだ。
導入予定の無い企業の理由は6割が導入コストが理由になっているね。

Iちゃん

でも、コストをかけても「セキュリティ」の面で、必要を感じた企業が採用しているのだと思うけど、「導入のメリット」は何かしら?

Pパパ

図3 特長は5つ
図3 特長は5つ

そうだね。
メリットは5つあると言われているんだ。
(1) 管理性、(2) セキュリティ、(3) 可用性と移動性、(4) 環境性、(5) 総所有コスト(TCO)だ。
1つづつ説明しよう。
先ず(1)の「管理性」だが、シンクライアントでは、システム管理者はサーバー側だけ管理すればよく、全てのクライアントの を統一環境・設定で運用することができることだ。
つまり、サーバー側からソフトウェアが配信されるために、ク ライアントPC側でインストール作業が要求されることは殆ど無く、データもサーバー側に存在しているから、ユーザーはローカルHDDのバックアップやメンテナンスをしなくていいことになるんだ。

小野田君

そうなんだ。
ソフトウェアの更新もサーバーレベルで実行されるんでしょう。だから、個々のシステムを手動で更新する必要も無くなって、アプリケーションのバーション管理からも開放されるんですね?

Pパパ

図4 盗難でも大丈夫!
図4 盗難でも大丈夫!

そう、その通り。
(2)の「セキュリティ」は、シンクライアントの一番の訴求点でもあるんだが、シンクライアント端末には端末自体にデータを保存したり、削除したりする手段が原則として提供されていないため、常に安全な状態クライアントPCを運用できるよね。

小野田君

それで、クライアントPCが盗難にあっても、電源を切ってあればメモリもすべてクリアされているので「情報漏えい事件」になることはないんですね。(図4)

Pパパ

次は(3)の「可用性と移動性」だね。
可用性とはシステムの壊れ難さのことなんだが、信頼度と言った方が分かり易いかもしれないね。
シンクライアント端末にはHDDなどの障害を起こし易い機械部品が少ないことは説明したとおりで「故障し難いシステム構成」と言えるんだ。
また、障害が発生した場合や停電など電源が突然オフになった場合でも、データ自体はサーバ側にあるため、他の端末からは直ぐに利用可能になるよね。

Iちゃん

「移動性」って何?

Pパパ

例えば、小野田君が会議室に行ったり、外出したりしても、自分の席のデスクトップ環境を利用することができる、ということだ。
話をメリット(4)の「環境性」に移すよ。
何回も言うが、シンクライアントの専用端末にはHDDやファン等がないから騒音が殆ど無いことになる。
通常のPCに比べてコンパクトで省スペースであり快適なオフィス環境に役立つし消費電力も少なくて済む。
発熱も少ないのでエアコン等を含む電気代も含めて大きな「省エネ」になるってわけだ。

Iちゃん

いいことずくめね。
最後の(5)の「総所有コスト(TCO)」*3って、どういうことかしら?

Pパパ

うんうん。
PCの1年にかかる総維持コストはね、購入コストの4〜7倍になると言われているんだよ。
シンクライアントの場合には、集中管理によって管理工数を大幅に削減できるし、リソースの有効活用もできるから、(1)〜(4)のメリットに加えて「更なるTCO削減」に貢献できるんだね。

Iちゃん

そんなに「いいことづくめ」なのに、普及がいまいちだったり、導入検討中が多いのは、説明があったけど「導入コストが高い」ってことなのね。

Pパパ

そうなんだ。
図2の「導入予定がない」と「必要性は感じているが時期は未定(検討中)」の合計が8割近くあるが、その理由は

(1)
導入コストが高い
(専用端末も安くは無く、サーバー・ルームの拡充を含めてサーバー側の投資を考えると、元が取れると思わない)
(2)
今のクライアント環境で導入の必要がない
(3)
帯域確保のためにLAN/WAN環境の刷新が必要
(4)
動作しないアプリケーションがある

とか言っているんだね。

小野田君

そうすると、今後飛躍的な普及は望めないってことでしょうか?

Pパパ

そうだね。
検討中の企業の中に「今のところは必要ないが、情報漏えい対策で、いずれ導入検討を余儀なくされるのではないか」と答える企業も少なくないので、「情報漏えいの問題」とのバランスでゆっくり普及していくのではないかと、私は考えているところだ。

小野田君

「シンクライアント」について、概ね理解できました。
有難うございました。

Iちゃん

パパ。
私、教えてほしいことがあるの!
昨日のテレビで「パスワードの使いまわし」について注意するよう報じられていたんだけど、私、いろんなものに面倒くさいので同じパスワードを使っているの。
「パスワード」のことを勉強したいし、私のパスワードの使い方の指導も頼みたいんだけど。

Pパパ

はっはっは。
いつも「自分のこと中心」の愛ちゃんらしいテーマだね。
いいとも。

*1
情報漏えいについて:このコラムの第110回で解説済み。
*2
キャッシュ:「cache」のことで、元々は「貯蔵する」というような意味。PCでは「一度使ったり表示したものを覚えておき、必要な時にはそれを再度利用する仕組み」を指している。
*3
TCO:Total Cost of Ownershipの略で総所有コスト(コンピュータシステムの導入、維持・管理などにかかる費用の総額)のこと。

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