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第42回 NGNの話(5)

IPよもやま話

IちゃんとPパパの会話が続きます。

イラスト

Pパパ

今日は前回話が出来なかった「NGNとインターネット」の話をしようと思う。

Iちゃん

インターネットとNGNって競合するのかしら。

Pパパ

そうだね。競合する部分もあるんだ。(図1)
しかし、インターネットとNGNのコンセプトの最大の違いは「NGNが加入電話網」だと言う点だね。
最初に勉強したように「NGNは新IP加入電話網」として位置付けて、いいからだね。

図1 NGNとネットは競合する?
画像 NGNとネットは競合する?

小野田君

前回は私の質問で肝心の話ができなくてすみませんでした。
NGNとネットの比較を、表形式で比較したものがありますか?

Pパパ

うんうん。作っておいたよ。(表1)
よく見てくれ給え。

Iちゃん

表は、後でゆっくり見るけど、NGNが決定的にネットに勝つ点を教えてくれないかな。

Pパパ

しかたない子だね。
最近の若い子は「結論を急ぐ」ね。(笑)
いいとも、いくつか教えよう。
図2をみてくれ。
NGNがネットに勝つことは、4つある。

表1 NGNとインターネットの比較

表1 NGNとインターネットの比較
NGN判定比較項目 判定 従来のインターネット
通信事業者(NTTなどのビッグキャリア) -ネットワーク管理者 - プロバイダで多数(総合責任者はいない)
高品質(通信速度や安定性などの品質保証が可能=新加入電話網が目標)通話品質 × ベストエフォート型の最たるもので「不安定」
低い(サービス提供事業者は、キャリアとの契約に従ってNGNを利用するので)サービス提供の自由度 高い(これが大きな特長であるが、そのためにいろいろな犯罪も発生しやすい)
高い(利用者は全てネットワーク接続時に個別認証される) セキュリティ(不正利用やウィルス面) × 低い(高い自由度の反面、匿名性が高く、不正アクセスやなりすまし、ウィルス攻撃等が容易)
1台のパソコンをADSL、無線、FTTHなどに、シームレスに接続可能 マルチアクセス × 個別にネットワーク接続が必要
キャリアが提供するプラットフォームの利用が可能(認証は確実) 課金・認証・決済等の機能 利用者が自由に設定できる
大きい(キャリアがサービスプラットフォームを独占することから、囲い込みにつながりやすいといわれている=今問題化) サービス提供事業者に対するキャリアの影響力 低い
インターネットより割高になることが予想される 利用料金 安価に利用できる
不稼働率が、20年に1時間のレベルに2008年の目標(NTT) NWの信頼度 ベストエフォート型で不安定
  網機能の開放 × データを送受信するだけ
本来が加入電話網(光&IP)を目指している。(固定・移動電話&FAX可能) 加入電話網機能(端末収容) インターネット電話・インターネットFAXが利用できるが、機性は不充分

図2 NGNがインターネットに勝てること画像 NGNがインターネットに勝てること

Pパパ

少し話が難しくなるが、ついてくるかい?

小野田君

はい。一生懸命聞きます。Iちゃんも真面目に聞こうね。

Iちゃん

いいわ。

Pパパ

では、図2について説明するよ。
まず、(1)の品質保証だが、10メガ級の高帯域を安定利用できるんだが、少ないホップ数で「網内遅延」を防ぐんだ。
これで「品質保証を活用するサービスが可能」になるね。網内遅延は「数ミリ」程度なんだよ。インターネットは良くても30〜150ミリ程度だから如何に遅延が少ないか分かるだろう。

Iちゃん

ホップ数って何?

Pパパ

ルーターの中継段数とでもいったらいいかな。
NGNは端末−エッジルーター−コアルーターエッジルーターと3つのホップと少ないが、インターネットはいくつものホップを経て接続されるので遅延が大きくなるんだよ。

小野田君

遅延は、他の網と比較するとどのくらいですか。

Pパパ

加入電話網は、札幌−沖縄間で28ms程度。IP電話網は30〜150ms程度だね。

(2)の「セキュリティ」はね。
「回線認証」機能があるのでVPN接続が手軽になり、他の認証との連携で確度が向上することが特徴だ。
通信制御サーバーが回線ごとの発信者番号や発IPアドレスなどをチェックする(基本)し、VPNの構築が、いままで中小企業ではコスト的に難しかったが、今後はNGNで可能になるね。

また、異なる企業間のビデオ会議に活用できるようになるし、シン・クライアント(注1)の認証と使い勝手を向上できるんだ。

Iちゃん

小野田君、理解できる?
私には少し難しいわ。
後で、よく教えてね。

小野田君

いいとも。
お父さん、(3)はどういう意味ですか?

Pパパ

ユーザーのアプリケーションから網を操作できるんだよ。これはネットでは無い機能だ。このためにインターフェースが公開(通信事業者が他のベンダーが利用できるように2つのインターフェースを公開)され、利用が広がる可能性があるんだよ。
その1つは「アプリケーションサーバーとNGNを接続するANI(国内ではSNI(Application Server Network Interface)と呼ばれることもあり、SNIはNTTが独自につけた名称)(注2)、もう1つは、「NGNとエンドユーザーの端末を接続するUNI(注3)

小野田君

(4)は何となく分かりますが、具体的に教えてください。

Pパパ

日本の加入電話網は世界一の信頼度(=20年に1時間しかダウンしないレベル)を持っているが、NGNもこれに近づくようにがんばっているんだよ。
通信回線や機能を冗長化し、トラブルが発生した際には瞬時に切替できる。
入り口のエッジサーバーにはシスコの二重化構成を採った信頼度の高いものを使うんだ。
ただ、加入電話の交換機のような呼制御のフェーズ1、フェーズ2(注4)のような処理はないがね。
また、災害時に電話が集中した場合にトラフィックを制御して輻輳(ふくそう)を未然に防止し、ネットワーク機能を確保するようにもなっているんだよ。

小野田君

図3 将来SaaSもNGNで
イラスト

NGNが、信頼度に優れた「新IP加入電話網」であることが分かりました。
SaaS(注5)のようにインターネット利用のシステム(注6)が普及していますが、ネットの代わりにNGNを使った方がいいんじゃないですか?

Pパパ

ほほう。小野田君も凄いことが言えるようになったね。そうなんだよ。近い将来その方向もでてくるだろうね。

小野田君

今日の話は少し難しかったですが、よく復習してみます。
次回は、また、教えてほしいテーマを持って伺いますのでよろしくお願いします。

Pパパ

いいとも。

注1
シン・クライアント:企業の情報システムにおいて、社員が使うコンピュータ(クライアント)に最低限の機能しか持たせず、サーバー側でアプリケーションソフトやファイルなどの資源を管理するシステムのこと。
注2
SNI:Application Service-Network Interface(各種アプリケーションサーバーとの接続インターフェース
注3
UNI:User-Network Interface(ユーザー端末との接続インターフェース)
注4
フェーズ1、フェーズ2:交換機が自動的に回復するしくみで、フェーズ1は、軽障害で通話中の呼は保証、新規受付中止で数十秒で回復する。フェーズ1多発や重障害のときは、接続中の呼も含め全断し、数分間で自動的に初期設定する。
注5
SaaS:「ソフトウェア・アズ・ア・サービス(Software as a Service)」の頭文字を取った略語。インターネットを通じてソフトウェア機能を提供するサービスをさす。
インターネット環境があれば、いつでも使えるソフトである。
注6
SaaS利用のシステム:SaaSを利用した通信系のシステムには「Web会議システム(TV会議システム)やボタン電話(ビジネスホン)などが登場して普及し始めている。

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