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Hitachi

I(愛)ちゃんとP(パパ)とO(小野田君)の会話が続きます。

イラスト

Iちゃん

今日は「有機ELパネルの話」よね。
液晶に取って代わるような新素材って聞いたけど、面白そうな話ね。

Pパパ

そうだね。最近話題になっていて、テレビやスマホに使われだしているんだよ。

Iちゃん

そもそも「有機EL」って何なんですか?

Pパパ

ELとは「electlro Luminescence(エレクトロ・ルミネッセンス)の略でね、電流を流すと、赤、緑、青に光る有機化合物を使ったパネルのことだ。
有機化合物は炭素を含んだ物質で、外部から電気や熱と言った刺激が加わると光るものがあるんだ。この性質を利用し、細かく配置した有機化合物が光ったり消えたりすることで映像が表示されるのさ。

Iちゃん

何だか分ったような気もするけど、「有機」という意味も分らないわ。

Pパパ

そうか。
説明をし始めると長くなるから、簡単に言うとね。
科学的(*1)には「機=炭」なんだ。
つまり、「有機」は炭素を含むものを指し、「無機」は炭素を含まないものを指すんだね。今日のテーマの「有機EL」は、炭素原子が主体で構成されているため、このように呼ばれているんだよ。

Iちゃん

うーん、何となく分りました。
それで「有機EL」には、「液晶」と勝負して当然勝ち目があるんでしょうね。

Pパパ

そうだね。
液晶との比較の前に「液晶との違い」を説明しよう。
液晶パネルの場合、素材が自ら光らないので、背面に常に光る「バックライト」を配置しているんだよ。液晶は、電気が流れることによって光の通り方が変わる性質を持っており、これを利用して映像を表示する仕組みだ。光を通さないはずの場所から光が漏れることがあり、明暗の表現に弱い。一方で、素材が自ら光る有機ELは光が漏れないため、暗いところは暗く、明るいところは明るく、はっきりと表現できるんだ。これが、メーカーがアピールする「色鮮やかで、黒色が美しい」という表現につながっているんだね。

Iちゃん

そうなんだ。

Pパパ

このことを、図で分り易く「テレビ」の例で説明したものがあったので、それを(*2)お見せしよう。(図1)

図1 液晶テレビと有機ELテレビの比較
図1 液晶テレビと有機ELテレビの比較
出典:ヨドバシカメラのPR資料を藤島が複製

Iちゃん

うーん、図を見ただけでは良く分らないけど?

Pパパ

そうか、では、少し補足説明しよう。
要点は「画面を引き締める黒色が本物」ということなんだが、エリア単位でバックライトを当てて色を映す液晶では、黒い部分のバックライトを遮っても周囲からの光漏れがあるため、深みのある黒にはできないんだ。それに対してサブピクセル自体が発光する有機ELなら画素ごとに光を制御して、完全な黒を再現できるんだね。暗い領域での表現力が増し、色彩もより鮮やかになる。さらにHDR技術(*3)による高いピーク輝度を得たことで、現実さながらの明るさ、色再現を可能にしているんだよ。
ここが、液晶に勝つところだね。

Iちゃん

液晶テレビになって、薄くなって「壁掛けテレビ」も生まれたけど、この点はどうなの?

Pパパ

うんうん、いい質問だ。
分りやすい図があるから、見せよう。(図2)
図からわかるように「有機ELテレビ」は「テレビであることを忘れるほどの薄型・薄枠デザイン」だよね。

図2 液晶テレビと有機ELテレビの比較
図2 液晶テレビと有機ELテレビの比較
出典:ヨドバシカメラPR資料から転載

小野田君

凄いですね。部屋のインテリアにマッチさせ易いですね。
液晶と有機ELパネルを、色々な角度から比較するとどうなりますか?

Pパパ

うん、いい質問だ。
比較資料を作ったので、表1を見てほしい。

Iちゃん

表を見ると「有機ELの完勝」というわけでもないようね。

表1 有機ELと液晶の比較
表1 有機ELと液晶の比較
(※1):画質には「精細度」「コントラスト」を含む。
(※2):デザインの自由度には「フレキシブル比」も含む。
この表の出典:読売新聞(H29.8.20)とEETimes JAPANを参考に藤島作成

Pパパ

図3 有機ELテレビ価格
図3 有機ELテレビ価格

そうだ。
黒など「色が鮮やか」と自慢するが、それ以外にも「パネルを曲げ易いため、デザインの自由度が高い」んだ。有機ELパネルは、素材が自ら発光するので、バックライトのような硬い部品が少ないのが有利。液晶の場合はバックライトの配置を工夫しなければならないんだね。
弱味は、「分子の結合が弱く、崩れ易い」ため、劣化し易いとの見方もあるようだね。それより最大の弱点は、価格だ。テレビの量販店の実勢価格をみると、日本メーカーの有機ELテレビは55型で45万円前後と、液晶テレビの2倍以上だそうだからね。

小野田君

日本製と言われましたが、韓国などには負けているんですか?

Pパパ

残念ながら、その通りだ。
日本は、ソニーが1980年代に製品を発売したくらい先行した(*4)のに、いまは韓国に完全に後塵を拝しているんだよ。

小野田君

そうなんですか。具体的にはどんな状況ですか?

Pパパ

新聞報道を参考に作ったのが、表2だ。韓国製の世界出荷量でシェアは何と9割なんだ。日本メーカーが販売する有機ELテレビのパネルは、自社製でなく、大半がLG製だし、米アップルの新型iPhoneには当面、サムスン電子が供給するとの見方が有力視されているくらいなんだよ。
有機ELテレビの量販店の実勢価格では、韓国製品の方が現在は約30%以上安価なようだ。

Pパパ

韓国との比較も分り易い表がある。表2だ。

表2 有機ELテレビの市場での日本と韓国の状況
表2 有機ELテレビの市場での日本と韓国の状況
出典:読売新聞(平成29年8月20日)を参考に藤島作成(加筆)

Iちゃん

あらー、情けないのね。液晶なら日本が断然リードしていたんでしょ。

Pパパ

そうだ。
さっき言ったように、かつては日本企業が先行していたんだが、ソニーの製品は希望小売価格が高くて、消費者に受け入れられなかったんだね。
他の電機各社も、08年のリーマン・ショック後、事業のリストラを進める中で、テレビ用の新しいパネルを研究する姿勢が薄れていたので、韓国に追い抜かれてしまったんだ。(*5)

小野田君

これから頑張るしかないですね。市場の伸びは、どのように予測されていますか?

Pパパ

ある調査会社(*6)の予測では
① テレビやスマホに使うパネルのうち、有機ELが占める割合(金額ベース)は2017年の約2割から24年には4割弱まで伸びる。
② 対する液晶は約8割から6割程度まで落ち込む。
となっているね。

Iちゃん

分りました。日本の今後の巻き返しに期待します。
ところで、次回だけど・・・。

小野田君

次回ですが、この有機ELテレビが最近「日本勢の参入で競争が激化」してきて「低価格化」も進んでいるそうです。
その新聞報道もみたので、私が「有機ELテレビ」について最近の情勢を調べて報告します。

Pパパ

そうか、いいとも。

*1
有機と無機:生物学的には、少し違って「ミネラル」のことを「無機質」と呼んでいる。ミネラルとは、生体を構成する主要な4元素(酸素、炭素、水素、窒素)以外のものの総称。
*2
「有機ELテレビ」で検索したヨドバシカメラのPR記事。
*3
HDR技術:「HDR」とは、High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)の略。
従来のテレビシステムよりも、より広い明暗差を表現しようとする新規格。(デジカメのHDRとは違う)
*4
ソニーの発売:2017年末には、ソニーが11型と小さいながらも世界初の有機ELテレビを発売し、業界を驚かせた。だが、この動きは「単発」に終わる。
ソニーの製品は希望小売価格が20万円と高く、消費者に受け入れられなかった。
*5
量販店の販売:韓国はLG電子、日本では 「東芝」「ソニー」「パナソニック」製品が販売されている。
*6
ある調査会社:IHSマークイット社のこと。

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